脳静脈血栓症について

脳静脈血栓症について

脳の動脈が閉塞して発症する脳梗塞はよく知られている疾患ですが、脳から心臓へ戻る経路である静脈や静脈洞がつまって発症する脳静脈血栓症は、比較的まれな疾患です。脳が急速にむくみ、静脈性脳梗塞あるいは脳出血を引き起こし、頭痛、嘔吐、けいれん、更には運動障害、意識障害等の症状が出現します。特に昏睡状態、急速な神経症状の悪化、局所症状がある場合は、予後が不良と報告されており、死亡率はおよそ30%と言われています。原因は感染症、糖尿病、脱水、妊娠、経口避妊薬、外傷、開頭手術後、悪性新生物、血液凝固能亢進状態などが報告されていますが原因が分からない場合も少なくありません。

 

静脈洞血栓症の頭部CTの経時的変化

図1                        図2                          図3                         図4

 上の図は静脈洞血栓症の頭部CTの経時的変化です。頭痛と左片麻痺を訴えて受診した時のCT(図1)では脳の実質に異常は認めませんでしたが、脳血管撮影では静脈洞の閉塞が確認されました。2日後に失語症と入院時とは反対側の右片麻痺が出現し左前頭葉に多発性脳出血を認め(図2)、その後脳出血と脳浮腫は更に増悪し昏睡状態となったため減圧開頭を行いました(図3)。約半年後、後遺症状を残し杖歩行で自宅に退院となりました(図4)。

 治療は、非常に複雑です。血栓を溶かす治療を行うと、出血が発症したりすでにある血腫が増大する危険性が高くなり、また頭蓋内圧を下げることに重点をおくと、血液粘稠度が上昇して血栓が増えることがあります。症状と画像所見、経時的変化から総合的に判断し、抗凝固療法、抗脳浮腫剤投与、高血圧治療、抗けいれん薬投与、減圧開頭術、血管内手術などを組み合わせて治療を行います。動脈閉塞性疾患より可逆的であるため治療をより積極的に行うべきであると言われています。

 理事長・院長 若林伸一

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